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2002年春季版

青梅

ひきしまった果肉を包む
固く つめたい被膜
豊かにはずむ 青い個の球

しぶとい青梅の実
やわらかい 青い皮膚のまわるい面で
びんかんな生理の毛はふるえ
見えない変化を繰り返す

その膨らむ重さに
ささえきれない重さに
ほっと緒を切り 落とす

深夜
雨戸一枚をはさむ内と外で
同時に同じ響きの
神韻を聴く
                        
 



歩きつづける 道端で
腰を下ろして ふと来た道と行く道を見つめている
来た道は霧の中に隠されて
行く道は細く先へ延びている
途端に
私は 私の震えるいのちにしがみつく

私へ わずかに触れてくるものに
私は崖っ淵に押し込まれ
私は足元にに気ずかずにいた
落とし穴へ追い込まれていた
この毎夜訪ねてくる 闇は
無限の彼方とてを結び
進むことも退くことも許さずに
じっと見つめている

別の夜明けを 待っているだけなのに




水の記憶

潅木や雑草に隠された
岩の面で絶え間なく沁み出て
岩の面を絶え間なく滑って
流れる水
山の斜面の割れ目を落ちる
なぶる風にゆらいでは 引きずられ
喬木の枝葉の間から覗く
傷ついた空を投影している
あとうん の虚空の環
冷え冷えとした 時のカーブする線路
走る 流星が光る
切り取られた空 の暗黒の断面で
仮装する日常から
放り出された 人の気配もない寒駅
独りの人のいっかくで
心ぼさそうな手つきで
刺々しい岩の裂け目を

その向こうに移し変えている




夜の列島 

冷たい雨はやんだね
なのに核の傘は仕舞わないよ
すっかり 鳩の糞で
鎖も錆付いているのにね

もぬけの殻では夜も寒いってさ
闇に支配させ続けるのかね
繋ぎ目がギシギシ 音をたてて裂けているよ
今度は石の縄で縛るのかね
いまわしく切り刻まれて?





やわらかい時計

昨日 僕は帰り道に時計を落とした
深い空のどこかに
二つの時間を知らせる一つの時計を

 風の背後に閉じていく
 砂漠の中の一粒の砂と
 一塊の塵埃が
 原初の蛆虫に還る時の肉

食い違った溝で 時計は音を変えた
それで今朝 僕は出掛ける道で見つけた
やわらかい時計を失わずにすんでよかったと
深呼吸を一つして答えた




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